書評:視覚マーケティングのススメ

前回、『売れるデザインのしくみ』の書評を書いたけれど、その中で紹介されていたのが本書。

この本には、デザインでできる多くのことが書かれている。
売れるデザインのしくみで書かれていたトーンアンドマナーについても触れているが、どちらかというと実践的な本で視覚的にわかりやすく教えてくれている。そして、それによってどのような効果があるか、ということも。

とてもためになったのは、以下の3点。

  • 実用性重視かデザイン重視かは二者択一ではない
  • デザインは先に決めてしまう
  • デザインで人材マッチング力を上げる

実用性重視かデザイン重視かは二者択一ではない

どうも、「デザインがいいと機能的に物足りなくなっている」、逆に、「デザインはイマイチだが実用性がある」というものに慣れすぎているのか、共存することはほとんどないと思い込んでいないだろうか?本の中では、デザインと機能性の共存ができているものの例としてApple製品が挙げられている。
高いデザイン性と高い技術力は共存してこそ顧客満足度が上がるので、エンジニアが試作品を作る段階でデザイナーと共同で動けたらいいと書いてあって、ほんまに頷くことが多いのだけれど、個人の活動の際にコラボレーションするのはなかなか難しいので個人レベルでは二の足を踏んでいる…。

デザインは先に決めてしまう

ここでいうデザインとは、商品の視覚効果を先に決めてしまうということだった。つまり、見る人の反応を先に決めてしまうというものだ。「すごい!」「びっくりした!」「感動した!」などの反応・感情を先に決めておくと、軸が決まるのでブレることがなくなるので、手戻りも少なくなるはず。プログラム作るときとかはなんとなく作り始めて後々ウリを考え始めたりすることがあるのだが、どうしても無理やり感がある場合もあるので、そういう発想法があることは覚えておきたい。

デザインで人材マッチング力を上げる

これは、日本中の多くのサイトが損している部分だと思うので声を大にしていいたいが、この会社は自分向きである、というフィルターにひっかかるかどうかはその会社のサイト次第であるということだった。そして、欲しい人材像がそのサイトにデザインとして描かれているかどうか。

例では、女性の採用が全然うまくいかずに採用にお金がかかっていたが、欲しい人材像に合わせて採用ページをリニューアルしたら100人くらい応募が殺到したということだった。
ちなみに、求人サービスなどを使うと採用された社員の年収の3割くらいが手数料としてかかるので、年収400万の人を雇ったら120万くらい。それでもなかなかいい人材がこない、とのことだった。
しかし、100万円くらいかけてサイトを作り直したら、優秀な人材が自分から応募してくるようになったのでコストが削減されたという。本当にお笑い話のような感じだが、たぶん自分たちは普段自分の会社のサイトとかあんまり見ないからそういうところに対するアンテナが完全に麻痺してるんだと思う。もしくは他人事か。

デザインでコスト削減・人材発掘と、デザインの力はとどまることを知らない。

デザインは誰でもできるのか?

私はこの本を、日本版ノンデザイナー・デザインブックじゃないかなと思っている。第2部からは、デザインセンスを磨く5つのポイントが書かれているのだが、そこを読んでそう思った。特に、日本語フォントについての話などは面白かった。『デザインの9割は文字組みで決まる』と書かれているのだが、私はそこまでフォントに気を使ったことがない。見た目的にひどくなければOKくらい…。しかしノンデザイナー・デザインブックとウジトモコさんの本を読んできて意識が変わってきている。
フォントを変えるのは、誰でもできることだ。もちろん、商用フォントを買って云々というのは敷居が高いところなので、難しいが、もっといろんなフォントを試してみようと思った。

デザイナーさんもコンサルタント業みたいなところがあるんだろうなぁとしみじみと読ませてもらった。お客さんのビジネスのことをきちんと考えていないと書けないことばかりだし、そういう思考のある人だと信頼できる。我々のようなエンジニアもだが、発注側に回りそうな人、デザインの可能性を小さく考えてるデザイナーさんなど、多くの人に読んでもらえたらいい本だと思う。

あと、読んでいる最中に呟いていたら、ウジトモコさん本人からメンションもらった!

私も良い本だと思います!!


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